「グレイテスト・ヒッツ」Vo.ジャニス・ジョプリン
「ロックンロール・スタンダード・クラヴ」オムニバスVo.人見元基
「アタシを愛してないなら、とっとと出ていってちょうだい」というブチ切れ女のシャウト。男が歌う時は歌詞の「You know that I need man(アタシは男が欲しいって知ってるでしょ)」の「man」を律儀に「woman」に変えて歌う。
この曲はジャニス・ジョプリンが作ったのだから、彼女以上に感情を入れて歌える人はいない。女だからわかる。部屋中のモノを投げつけて「アタシを抱かないなら出て行け!」と叫びながら、心の底では相手が「バカだな、愛してるよ」と言って抱きしめてくれるのを渇望している。本当にドアを閉めて出て行かれた日にゃ、崩れ落ちてめそめそ泣くに違いないオンナの強がり。それもジャニスが叫ぶ、超一級の強がり。
彼女の声は安定していないところが魅力だ。
喉いっぱいに男の名を叫んだら、あんな声になるのだろうか。
人見元基が歌う「Move Over」は、女々しい嘆きはカケラも残ってない。出だしの「Hi!」というシャウトからして「オレを愛して無いなら出て行けよ、他に女はいるんだぜ」と鼻で笑う嫌味なオトコ。
彼の声をヘッドフォンで聴いていると、映画「レオン」でマチルダが「あなたのことを考えていると、お腹の下のあたりが熱くなるの」と訴えていたシーンをなぜか思い出す。
腹の下のほうにとんでもないマグマがあって、前半はふつふつと煮えている。サビで「nononono!」とシャウトが混じると「ボンッ」と小爆発を起こし始める。クドめのB’zの松本のギターに負けていない。クライマックスのシャウトでは予想通り、元基先生・大爆発の非常事態が展開される。
それにしても憎たらしいほど余裕がある。「now」の「ナァウ」という発音、「come on」の「カモォゥン」の響きのエロさに聴きながら鼻を押さえているほどだ(鼻血防止のため)。
生で聴いた時にも「どけどけどけ、オレを愛さない女に用は無いぜ!」と吠えまくって好きなだけシャウトして去っていった。捨てられる女の歌なのに、置いてきぼりにされたのはこっちだ。
……人見元基は罪なヴォーカリストだ、とつくづく思わされる一曲。
これからも彼が気まぐれに歌う機会を、待ち続けるしかない。
