※ライブレポ(1)からどうぞ>>
「妄想劇場」
ステージにはジリジリし始めているロック・ヴォーカリスト。
アルコールとヴォーカル的衝動という燃料満タン。
後は火をつけるだけ。
しかし、まだギターの準備ができていない。
「On guiter!最高だぜ!」と紹介しようとして、「……弾く前に言ってゴメン」とフライングを謝る。場をつなぐのに「こんなロックな人、日本にはなかなかいないよね」と持ち上げ、このぐらい褒めておけばいいですかーと落とす。最近、ライブの長さを考えると大体3時間、しゃべると4時間ですねぇとタラタラ言いつつ、あー大きな声出してぇ早く出してぇとじれったがってる風にウロついている。それを察したのか、ロジャーさんがぐわーんぐわーんぐわーん!と3発ドラをブチ鳴らし、燻ってる彼の喉を焚きつけた。
Hey!He〜yeah〜〜〜ッッーーーーー〜〜〜〜(長すぎるため中略)〜〜ーーーー〜ッ!!!
「これから2〜3時間はうるさいからね」の告知通り、狭いライブハウスにギッチギチのギター・ベース・ドラム・キーボードの音が湧き上がる。その音圧にどっかと足を掛け、ヴォーカリストは一発吠えた。
彼の喉に火をつける1曲として、いつも「I Got the Fire」はふさわしいし、「まんまやんけ」とも思う。ロックの原点が怒りだということがよくわかる、第2部オープニングの1曲。
……なーんて書きながら、実はさっきから「I got the fire 」の訳がわからなくてネットや手持ちの辞書を彷徨っていた。検索サイトでは「私は困ってしまった」と出るとこあり、「私は火を得た」と直訳のところあり。怒ってるぞなのかもうあきらめたなのか。わかんないけど「アンタは嘘つきだ」と言ってるし、思い通りにならないベイベーへの怒りブチまけソングであることは確かなようだ。
その証拠に、ヴォーカリストは、ステージの上で顔を真っ赤にして長い長いシャウトを繰り返す。さっきのスイートなジャズヴォーカリストが猛獣化してるのを見て、毎回ただ惚れ惚れする。そう、惚れ惚れ。こんな多重人格系ヴォーカリスト、世界に何人いるんだろう。
次の曲では、怒りではなく幸福感をロックに乗せて撒き散らす。
これも定番「Hallelujah I Love Her So」。
この曲のツボは「Hey,baby! I'm all alo〜ーーne!」の歌い方。
寂しいんだよぉと泣きつく巧さに、天性の“甘え上手”が滲む。
熟練アーティストたちと辛抱強い観客たちにあやされながら、彼はのぼりかけた「オトナの階段」を徐々に踏み外していく。キャッハー歌楽しー演奏サイコーお酒おいしーと、明らかに表情が緩みはじめ、間奏からの入りをまちがえて舌を出した。
シャウトの長さがすでに当社比120%、ギターとの掛け合いを「もうやめるの?もうちょっとやろうぜぇ」とおねだり。あぁ階段から落ちる!たった5段=5曲しか登ってないのに!
このままずるっとダメになるのかなと思ったら、まだ彼の「理性」は残っていた。
「Bright Lights,Big City」では眉をぐっと寄せてバンドの音や流れを調整しながらオトナのロックを聴かせる。「Move Over」の入りが凄い。ほぼドラムと手拍子だけのシンプルな音に、シャウトを細く絞ってうめき、苦悩のセリフを乗せる。伴奏が爆発してからは思い通りにならない女にシャウトをちぎっては投げ、ちぎっては投げ、半泣きで追い出そうとしていた。
語りのパートでの哀願。
聴くたびに、演劇的になる。
こんな風に歌えるなら、まだ完全には酔ってない。
「Ain't No Sunshine」では、サイケでコッテリした演奏をうねりのある声でかき回す。ときどき、音の渦を逃れて呆けたように隅で飲んでいる。そして、またマイクに吸い寄せられる。ふらついてはいても、バランスを取っている。
今日は大丈夫そうだなと安心したのは、つかの間。
次の曲で「オトナの階段」または「理性の階段」を踏み外したのは、こっちの方だった。
……ちょっと文体変わっていいですか?
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ヴォーカリストが「ちょっといいですかぁ?」と話しはじめた。
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また「ネタ下ろし」でね。
20年ぐらい前の歌を歌おうかな、と。
当時ですね。
わりとキッチリしたバンドやってたんですよ。
楽器はどれもアレンジがしっかりしてて。
歌だけが自由だったという。
ハイ!
クイズです!
次の歌は何だと思いますかぁ?
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前の列の人が言っちゃったけど、私には聞こえなかった。でも、99%は確信していた。後はあの前奏が鳴るのを待つだけ。なのに。
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やってみたけど、これがめんどくさくって。
歌はいいんだけど、楽器がめんどくさいんだって。
……って、大谷令文に言われました♪
「こんなの弾きたくない」
「キーボードだけでいいじゃん」
ま、確かにそういうところのあるバンドなんですけどね。
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ふわふわしゃべってる元基先生にこっちがジリジリ。
早く聴かせてくれーーー
あーでも聴くの怖いーーーー
もしこれで違う曲だったら(悶々)
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これはベースっぽい音のキーボードで入るんだけど。
せっかく水野がいるんだから。
そこはベースでってことで。
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あー絶対そうだ。あの前奏はベースに聴こえる。
「You're the one for me」
この曲については、2年前にバカな記事を書きながら考えていた。
「生『ぷりーずてるみー』なんて聴ける日は一生来ないよなぁ」
厚見さんのライブに飛び入りして歌ったと聴いた時。
チクショーとジタバタしながらも、期待値が0から50ぐらいに上がった。
それでも、あれはVOW WOWのメンバーだったからだよな。
難波先生が弾く?令文さんがやる?ロジャーさんが?水野さんが?
いやいや無い無い。
期待値を自分でぐいっと0に下げて、ライブに臨んでいた。
だから、予感が確信に変わってから歌に入るまで、長くながく感じた。
一生来ないと思い込んでいたものが。
き、来てしまった。
「オンベース、水野っ!」
呼ばれたベーシストの指が、弦を滑った。
♪べんべーんべーんべんべんべん べーんべんべーん ちゃらっら!
♪べーんべーんべーんべんべーんべん べーんべんべーん ちゃらっら!
※どうしてもこう聴こえる。カッコいい曲なのになぜ。
うわぁぁぁ前奏始まったよホントに歌うんだよどうしよどうしよ
いや、どうしよじゃない。
落ち着け。
脳細胞、全員耳に集合っ!
「ぷりーずてるみー」は2回しか出てこないので、人生最大の集中モードに入る。
絶対に聞き逃すまい!
こんなことがまさかあるとは!
妄想が現実に!
しかし、その「現実」は、2年分の妄想を遥かに凌駕していた。
ぷりーずてるみー!
べいびーぷりーずてるみー!
ステージの上のヴォーカリストは。
ニヤァっと笑いながらずばぁぁっと私を指差した。
……知ってます?
人を指差すって失礼なんですよ?
なんて失礼……しつ……しゅーーー(失神)。
妄想でも何でもなく、隣にいたmimiさんが代わりに「きゃー」と喜んでくれたのでホントだったんだろうと思う。
この時、本当に昔からのファンの方にはめちゃくちゃ失礼なんだけど「人見元基がVOW WOW辞めてて良かった」なんてセリフがよぎった。だって武道館じゃありえない。大阪厚生年金会館でもありえない。教室並みの小さなライブハウスで、客席が見えて、アホなブログ書いてる人の顔見つけて「どやどや」と指差してからかうロックスターは元ロックスター。だから、妄想が現実になってしまった。いや、妄想以上だ(まだ動揺)。
前に、ステージ上から口パクで「いつもよんでます ありがとう」を言われた時、人見元基を知らない人にまで「まるで少女マンガの一場面だったのよぅ(あくまで私見)」と興奮して言い散らした。雲の上の人が、自分にメッセージを投げている。しかもステージ上から。30代になって少女マンガまがいのことが自分に起こるとは、人生ホンマに捨てたもんじゃない。しかも「生ぷりーずてるみー」だよ、あー生きててよかった。大嫌いだった自分の名前(※)に歓喜の声をあげる日が来るなんて、思ってもみなかった。
※この経緯は重いので「続きを読む」にざざっと。興味のある方だけどうぞ。
でも、これはタダの偶然。
ふと目が覚めると、くだらない空耳にコーフンしてる自分のイタさに赤面する。他にいないんですか「人見元基ファンのテルミ嬢」っ!!1人で喜んでるとアホみたいなんで、いたら手を挙げてくださいっ!(切実)
指差し攻撃で脳をヤラれ、気がついたら曲が終わっていた。
終わる前に、クラクラの頭で確認したことがある。
ステージの上のアクションが大きい。
首振りながら床を踏み鳴らして歌う、サビの部分。
そこには「VOW WOWのヴォーカリスト」が確かにいた。
曲が終わって、私のしょーもない妄想よりずっとずっと想いの深い、昔からのファンの歓声と拍手が沸く。
「いやー20代に戻ったみたいだよ!」と照れたその人は、酔っぱらって奔放に歌うのが好きな「GENKI SESSIONのヴォーカリスト」に戻っていた。
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階段を踏み外してお恥ずかしいところをお見せしました。
続きは立て直します。
